成年後見人の利用にあたり必要な登記とは?登記手続きや証明書の申請方法を解説

成年後見人の利用にあたり必要な登記とは?登記手続きや証明書の申請方法を解説

目次

成年後見制度を利用するには、登記手続きが必要です。

住宅購入時などでも行われる登記ですが、成年後見制度ではどのような登記が行われるのでしょうか。

法定後見制度と任意後見制度ではそれぞれ登記手続きが異なるため、基本的な登記の仕組みについて理解しておくと安心です。

そこでこの記事では、成年後見制度への理解を深め、いざという時に安心して利用できるように、成年後見制度を利用する際の登記手続きや登記事項証明書の申請方法などについて解説します。

成年後見制度を利用する際に必要な登記とは?

そもそも「登記」とは、個人や法人のさまざまな権利などを記録し公示するための制度です。

成年後見制度を利用する際の登記以外にも、法人登記や不動産登記など登記にはさまざまな種類があります。

成年後見制度では、制度を利用したい人(以下、「本人」といいます。)を支援する成年後見人等の権限や任意後見契約の内容が記録され、これを成年後見登記制度といいます。 申立てが行われると、家庭裁判所は後見等の開始の審判と併せて成年後見人等を選任しますが、この際、成年後見制度では家庭裁判所から法務局に登記依頼がなされます(申立人などが登記申請する必要はありません)。

この登記により、本人や親族、成年後見人等が「登記事項証明書」の交付請求をすると証明書が交付されます。

なお、法定後見・任意後見を受けていない場合は「登記されていないことの証明書」の交付請求をすることもできます。

成年後見登記制度とはどのような制度なの?

成年後見登記制度とは、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容などを登記し「登記事項証明書」を発行してもらうことにより、登記情報を証明・開示する制度です。

法定後見制度や任意後見制度では、たとえ後見人等が変更されたとしても、あらかじめ決めておいた権限や契約に沿った保護・支援が継続されることが重要です。

そのためには、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容などを記録しておく必要があります。

登記自体は東京法務局後見登録課で行われますが、証明書交付については東京法務局以外にも全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課でも請求することができます。

なお、全国各地には法務局・地方法務局のほかに出張所や支局もありますが、出張所や支局では成年後見登記の取り扱いはしておりませんので注意しましょう。

任意後見契約の登記

任意後見制度とは、本人の意思能力があるうちにあらかじめ後見人となる人と契約をしておき、本人の意思能力が不十分になったあと、その後見人が契約内容に沿った保護・支援をする制度です。

契約は公正証書にて行い、公証人(※)がその作成と登記を担当します。

任意後見契約において登記される内容は、任意後見人の氏名や住所、代理権の範囲や任意後見監督人の氏名や住所などで、後見開始前と後で異なります。

任意後見開始前は、本人を保護・支援する任意後見受任者の氏名や住所、代理権の範囲などが登記されますが、任意後見開始後は、任意後見受任者が任意後見人となり、家庭裁判所が選任した任意後見監督人を登記します。

また、任意後見契約が解除により終了した場合などでは「終了の登記」本人や任意後見人の住所の変更があった場合などでは「変更の登記」をする必要があり、これらの登記申請は任意後見人や親族などが行います。

※公証人:法的知識と法律実務経験を有している、国の公務である公証事務を行う公務員

法定後見の登記手続き

法定後見制度とは、本人の意思能力が低下・喪失したあとに、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を保護・支援する制度です。

法定後見の登記手続きは、本人や親族などによる後見等開始の申立てがなされたあと、家庭裁判所が法務局に依頼して行います。

また任意後見制度と同様、本人が亡くなった場合は「終了の登記」本人や成年後見人等の住所の変更があった場合などでは「変更の登記」が必要です。これは後見人や本人の親族などが登記申請を行います。

後見開始の申立てから登記までの流れ

法定後見制度を利用する場合には、本人の住所地の家庭裁判所に後見等開始の審判の申立てを行います。申立ては本人や配偶者、四親等内の親族、検察官、市区町村長などが行えます。

ここでは、後見開始の審判の申立てに必要な書類や申請書類提出から登記されるまでの流れについて解説します。

必要書類を準備する

後見等開始の審判の申立てには、主に次のような書類が必要です。

  • 申立書類一式
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 登記されていないことの証明書
  • 医師の診断書(成年後見用)
  • 本人に関する資料など

申立書類一式には、申立書や申立事情説明書、財産目録、親族関係図などが含まれます。申立書等の書式については、本人の住所地の家庭裁判所によって異なる場合があります。

そのため、該当する家庭裁判所の窓口か、ホームページから書類をダウンロードして取得することが必要です。

また、本人に関する資料には、健康状態がわかる資料や収入・支出に関する資料などがありますが、必要に応じて提出しなければならない書類もあるため、家庭裁判所や弁護士・司法書士などの専門家に相談しながら準備するとよいでしょう。

申立書類を提出する

必要書類がすべて揃い、提出書類確認シートによる書類確認が終わったら、本人の住所地の家庭裁判所に連絡し、面接の予約を行います。

申立ての際には原則として面接が実施されており、事情を詳しく説明するために申立人や成年後見人等候補者が家庭裁判所を訪れます。

面接の所要時間は 1 ~ 2 時間程度で、開始時刻は後見申立てが午前 10 時か午後 2 時、保佐・補助申立てが午前 9 時 30 分か午後 1 時 30 分と時間が異なっています(東京家庭裁判所本庁後見センター)。

面接日が決まったら、準備しておいた書類を家庭裁判所に郵送します。

書類は、予約した面接日の 3 日前(土日祝日を除く)までに到着するよう郵送する必要があるため、早めに準備しておきましょう(1 週間前とする家庭裁判所もあります)。

家庭裁判所で審理が行われる

申立人や後見人等候補者との面接が家庭裁判所で行われます。

申立人は本人の意思能力や生活状況・財産状況、本人の親族らの意向等について、候補者は候補者の適格性に関する事情について確認されます。

また、必要書類を提出し面接が終了したあと、鑑定や調査官調査、親族照会などの審査が行われることがあります。鑑定は、申立書類として提出する診断書とは別に、家庭裁判所が医師に依頼して行われ、鑑定が必要かどうかは裁判官が判断します。

そして、鑑定や調査のあと、家庭裁判所により成年後見等の開始の審判が行われます。

家庭裁判所の審判が下る

家庭裁判所では、成年後見等の開始の審判がされるとともに、成年後見人等や必要に応じて監督人の選任も行われます。保佐開始や補助開始の場合には、同意権や代理権も定められます。

審判の内容は、本人や申立人、成年後見人等に書面(審判書)で知らされます。

審判に不服がある場合、申立人や利害関係人は書面が届いてから 2 週間以内に不服申立てを行うことができますが、成年後見人等の人物について不服申立てを行うことはできません。

また、2 週間以内に不服申立てが行われない場合は、審判の内容が確定します。

法務局で登記手続きが行われる

後見等開始の審判が確定すると、家庭裁判所から東京法務局に審判内容の登記依頼がなされます。2週間程度で後見等登記の手続きが完了し、後見人あてに登記番号が記載された「登記番号通知書」が送付されます。

そのあとは、東京法務局の後見登録課や全国の法務局・地方法務局の本局で登記事項証明書を取得できるようになります(申請書に登記番号を記入する欄があるため、申請には登記番号が必要です)。

なお、後見等について戸籍に記載されることはありません。

成年後見人の登記に関する証明書を申請するには?

成年後見人の登記に関する証明書を申請するには?

成年後見人等の登記に関する証明書には、後見開始前は「登記されていないことの証明書」後見開始後は「登記事項証明書」があります。これらの証明書を準備する場合、どこに請求すればよいのでしょうか?

ここでは、成年後見人等の登記に関する証明書の申請方法や必要書類、証明書手数料について解説します。

登記されていないことの証明書の申請方法

後見等開始の審判の申立てをする際にはさまざまな書類が必要ですが、その中に「登記されていないことの証明書」があります。

「登記されていないことの証明書」は、法定後見等や任意後見を受けていないことを証明するための書類です。同一人について重複して後見手続が行われないようにする趣旨です。

申請の際には、法務局の窓口やホームページで申請書を取得し、必要事項を記入のうえ東京法務局の後見登録課や全国の法務局・地方法務局の本局に提出します。運転免許証などの本人確認ができるもの、印鑑、証明書手数料が必要となるため、準備しておくようにしましょう。

また、本人以外でも申請することはできますが、その場合には委任状や本人との親族関係が確認できる戸籍謄本など、本人との関係性に応じた書類が必要です。

なお証明書手数料は、紙の証明書は1通につき 300 円(窓口・郵送・オンライン請求)、電子データの証明書は 1 通につき 240 円(オンライン請求)かかり、郵送やオンライン請求は、東京法務局後見登録課でのみ取り扱っています。

後見登記事項証明書の申請方法

次に、後見開始後の登記事項証明書の申請方法について解説します。

登記事項証明書は、後見人等が本人(成年被後見人等)のために代理で手続きする場合などに必要となる書類です。

たとえば、本人の代わりに後見人等が賃貸契約を締結する場合、相手方に本人の代わりに契約できる権利を有することを証明する必要がありますが、登記事項証明書はそのような時に後見人等が法律上正当な立場であることを証明するものであり、実際に本人を保護・支援するための重要な書類となります。

申請は本人(被後見人等)、後見人、後見監督人などの当事者や本人の配偶者、四親等内の親族、委任を受けた代理人などが行えます。

申請書の提出方法や提出先は、前述の登記されていないことの証明書の場合と同じです。

登記手数料は窓口や郵送による請求よりもオンライン請求のほうが割安で、窓口や郵送で申請する場合は 550 円、紙の証明書(オンライン請求)は 380 円、電子データの証明書(オンライン請求)は 320 円となっていますので覚えておきましょう。

成年後見登記に関する証明書を取得する際の注意点

成年後見登記に関する証明書(登記事項証明書や登記されていないことの証明書)の申請方法の詳細については前述したとおりですが、証明書を取得する際の注意点があります。

ここでは、注意点としてマイナンバーカードが必要になるケースと証明書の有効期限について解説します。

オンライン申請をする場合はマイナンバーカードが必要

証明書(登記事項証明書や登記されていないことの証明書)の申請や変更登記・終了登記については、インターネットにより登記・供託オンライン申請システムを利用して手続きすることができます。

ただし、証明書の交付請求については、申請の公的個人認証サービスを利用できるマイナンバーカードが必要です。

なお、窓口や郵送による方法と比べるとオンライン申請の手数料は割安に設定されています。

証明書の有効期限は提出先に確認する必要がある

証明書(登記事項証明書や登記されていないことの証明書)の有効期限について、特に規定はありません。ただし、証明書の提出先によって、発行から一定期間内(発行から 3 ヶ月以内など)の証明書という条件が付けられることがあります。

また、紙の証明書の提出を求められる場合が多く、電子データの証明書でも対応が可能かどうかは提出先によって異なります。

そのため、証明書を申請する前に、提出先に詳細を確認しておくとよいでしょう。

変更登記や終了登記の申請手続きをするには?

前述のとおり、後見等開始の審判の際には家庭裁判所から法務局への依頼により登記が行われます。

一方、登記内容を変更する場合や本人の保護・支援を終了する場合は、成年後見人等や本人の親族が登記の申請をしなければなりません。

ここでは、変更登記や終了登記の手続きについて解説します。

変更登記の申請

変更登記は次のような場合に必要です。

  • 本人(成年被後見人等)の住所・氏名・本籍に変更があった場合
  • 成年後見人等や成年後見監督人等の住所・氏名に変更があった場合
  • 成年後見人等や成年後見監督人等が亡くなった場合や破産した場合 など

変更登記をする場合には、変更登記申請書と変更内容に応じた書類を添付して、東京法務局後見登録課の窓口へ提出または郵送で申請します(東京法務局後見登録課のみで取り扱っています)。

なお、変更登記は成年後見人等だけでなく、本人(成年被後見人等)の四親等内の親族や利害関係者が申請することもできます。

終了登記の申請

一方、終了登記は次のような場合に必要です。

  • 本人(成年被後見人等)が亡くなった場合 ※任意後見制度においては、これ以外にも任意後見契約の委任者が亡くなった場合や任意後見契約が解除により終了した場合

終了登記をする場合には、終了登記申請書と後見等終了の原因となった事項を証明する書類を東京法務局に提出します。

変更登記と同様、申請は東京法務局後見登録課の窓口に直接提出するか、郵送するかのどちらかとなります。終了登記は、成年後見人等だけでなく、本人(成年被後見人等)の四親等内親族や利害関係人が申請することもできます。

成年後見制度の利用には登記手続きが必要

後見開始後にかかる費用はいくら?

今回の記事では、成年後見登記制度や登記事項証明書の申請方法などについて解説しました。

成年後見等開始の審判により審判内容が確定すれば登記手続きが行われ、後見人等は登記事項証明書を取得することができます。 証明書があれば、後見人等は本人の代理人として契約など様々な手続きを行えるようになるため、いざという時に備えて申請方法をしっかりと理解しておくようにしましょう。

ただ成年後見制度は、本人の意思能力が不十分になってからの利用となるため、どこまで本人の意思が反映されているか不確かな点もあります。

「本人が元気なうちから財産管理を始めたい」「本人の希望に沿った柔軟な財産管理を実現したい」といった場合には、家族信託の利用も検討するとよいでしょう。

家族信託であれば、信頼のおける人に財産管理をお願いできるというメリットもあります。選択肢の一つとして家族信託も検討していただければ幸いです。



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