家族は成年後見人になれる? なれないケースや家族以外がなるケースについて解説

家族は成年後見人になれる? なれないケースや家族以外がなるケースについて解説

目次

成年後見制度の利用を考えているものの、家族を成年後見人にできるのか疑問を抱いている人も多いかもしれません。

結論からお伝えすると、家族が成年後見人に就任することは可能です。一方で、いくつかの制約も存在します。

そこで今回の記事では、家族が成年後見人になれないケースをはじめ、家族がなる場合のメリット・デメリットについて解説します。

家族が成年後見人になるには?

成年後見制度には「任意後見」と「法定後見」といった 2 つのパターンがありますが、どちらも家族を成年後見人として任命することが可能です。

ここでは、任意後見と法定後見のそれぞれについて見ていきましょう。

任意後見の場合

任意後見人の場合、任意後見法第 4 条に規定されている事由に該当しなければ、本人が委任したい人(家族や友人を含む)を任命することができます。

ただし、本人から後見を委任されたのち、本人と後見人候補者の間で公正証書による契約を交わす必要があります。

この際、契約内容や手続きで疑問や不安が生じた場合は早めに然るべき相談先に相談しておくとよいでしょう。

そして、実際に本人の意思能力が低下した際は裁判所に申立てを行い、任意後見監督人(任意後見人が契約内容に従って適正に仕事をしているか監督する人)が選任されれば、任意後見人としての業務がスタートします。

なお、家族や友人以外を任意後見人に選ぶ場合は弁護士や司法書士といった専門家を選ぶケースがほとんどです。

法定後見の場合

法定後見の場合は、本人の意思能力が既に低下・喪失してしまっている状態で裁判所に申立てをし裁判所が最終的な判断を行うため、本人や申立人の意向が十分に反映されない恐れがあることに注意が必要です。

具体的には、家族を後見人候補者として申し立てたとしても、次のようなケースに該当する場合、家族が法定後見人に選ばれないことがあります。

  • 成年被後見人の所有財産が多額である場合
  • 家族間でなにかしらのトラブルが生じていたり、親族が後見人候補者に反対している場合
  • 本人と成年後見人候補者との関係が疎遠である場合
  • 成年後見人候補者と成年後見人の間で金銭の貸し借りがあるなど、両者が利害関係にある場合 など

また、家族が後見人として選任されなかった場合には第三者が選任されることになり、多くの場合は弁護士や司法書士をはじめとした専門家が選ばれます。

家族が成年後見人になった場合の注意点

家族が成年後見人として選任された場合、いくつか注意しなければならないことがあります。

ここでは主な注意点を 3 つ、取り上げてみました。

収支を裁判所へ報告する

成年後見人は毎月の収支や財産管理の状況を年に 1 回、裁判所に対して報告する義務があります。

この義務は家族が成年後見人になった場合でも必須であり、上記の収支状況とあわせて本人の状態についても伝えなければなりません。

その際、報告書や財産目録、収支状況報告書なども提出する必要があるので日ごろからきちんと金銭の出入りを把握しておくようにしましょう。(報告書は家庭裁判所の「後見サイト」から書式のダウンロードが可能)

なお、財産管理が複雑な場合は後見人の善管注意義務を適切に果たす必要があることから、前もって専門家に相談しておくことをおすすめします。

契約行為は裁判所の許可を得る必要がある

成年後見人は、重要な契約行為をする場合に裁判所の許可が必要となるケースがあります。

代表的な契約行為として本人の居住用不動産に対する契約が挙げられ、以下の行為をする場合は裁判所に対して「居住用不動産の処分許可の申立て」をしなければなりません。

  • 売却
  • 賃貸
  • 抵当権設定
  • 建物の取り壊し
  • (貸借物件である場合は)賃貸借契約の解除 など

このように、成年後見人であっても勝手に本人の財産を処分することはできず、一定の契約行為について裁判所の許可が必要となることを覚えておきましょう。

後見監督人の同意も必要となる

家族が成年後見人に選ばれた場合、後見監督人が付されるケースが多く見受けられます。

後見監督人とは成年後見人の業務を監督する人のことを指し、一般的には弁護士や司法書士といった専門家が選ばれることがほとんどです。

後見監督人が選任されている場合、先に述べたような法律行為(不動産の処分など)を行う際に、裁判所の許可を得るだけではなく後見監督人の同意も必要となります。

とはいえ、後見監督人は成年後見人の監督としての役目を果たすだけでなく、時には心強い相談役となってくれることもまた事実です。

そのため、成年後見人の業務においてなにかわからないことがあれば、まず後見監督人に相談してみるとよいでしょう。

家族が成年後見人になれないケース

家族が成年後見人になれないケース

本人が家族を成年後見人候補者に指定した場合であっても、家族が成年後見人として認められないこともあります。

ここでは、家族が成年後見人になれないケースについて見ていきましょう。

欠格事由に該当する場合

成年後見人は認知症や精神上の障害などで意思能力が低下した人に代わって、その人の財産を管理する必要があります。

そのため、成年後見制度において後見事務を適切に行えるかどうかといった観点は非常に重要であり、民法 847 条において法定後見人の欠格事由が定められています。

具体的には以下の通りです。欠格事由に該当する場合は法定後見人となることができません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟をし、またはした者ならびにその配偶者および直系尊属
  • 行方の知れない者

上記の欠格事由は任意後見制度、法定後見制度のいずれにも適用されるので注意しましょう。

使い込みのリスクがある場合

不正防止の観点から、家族が成年後見人に選ばれない理由の一つに「使い込みのリスクがある」ことが挙げられます。

成年後見人は被後見人に代わって本人の銀行預金を引き出せることから、財産に対して使い込みを犯すハードルは当然低くなります。

実際に家族が成年後見人となったあと、本人の財産を使い込んでしまった事例も過去に散見されており、家族仲が悪い場合など使い込みといった観点においてシビアな判断がなされるでしょう。

また、家族が任命された場合であっても弁護士や司法書士をはじめとした後見監督人があわせて選ばれることが多いほか、家族がなれなかった場合もこうした専門家が選任されることがほとんどです。

多額の財産がある場合

被後見人となる人に「多額の財産がある・賃料収入などの事業収入がある」といった場合、裁判所は成年後見人に家族を任命することを避ける傾向にあります。

というのも、本人に多額の財産がある場合、財産管理が非常に複雑になるだけでなく一定の専門知識が必要になることも珍しくありません。(事業収入がある場合は税務や経理の知識も求められる)

また、前述したように成年後見人は年に一度裁判所に対して本人の収支状況を報告する義務を負い、この時に必要な書類についても作成難易度が上がることはいうまでもないでしょう。

そのため、こうした場合には弁護士や司法書士、税理士などの専門職が選任されるケースが多く見受けられます。

家族が成年後見人になるメリット・デメリット

家族が成年後見人になるメリットとして、「安心感を得られること」と「経済的負担が少なくて済む」ことが挙げられます。

意思能力が衰えている人が自身のよく知らない第三者(弁護士や司法書士など)に財産をお願いするより、信頼のおける家族に管理してもらった方が気持ちの上で安心感があることはいうまでもありません。

また、専門家を後見人とする場合は一定の報酬を支払うことが通常ですが、家族であれば無報酬とすることも可能です。

その一方で、成年後見人の業務が家族の負担になることに加え、場合によっては着服や横領といったトラブルが生じる恐れがある点がデメリットといえます。

メリットとデメリットについてきちんと理解した上で、家族を成年後見人にするかどうか決めるようにしましょう。

家族以外の人が成年後見人になるメリット・デメリット

弁護士や司法書士、福祉関係の公益法人など家族以外の人を成年後見人とする場合、複雑な財産管理や契約行為を任せられる点がメリットといえます。

前述したように、本人の財産が多額である場合は手続きが複雑となる可能性が高く、そのような場合において専門家が成年後見人として業務を果たしてくれることは安心材料となるでしょう。

その一方で、成年後見制度を利用すると後見人以外は財産や不動産の管理ができないため、家族が本人の財産を把握できなくなることがデメリットとして挙げられます。

また、家族以外を後見人として選任した場合には後見人に対して報酬を支払わなければならず、経済的な負担も生じてくるでしょう。

成年後見制度の問題点

成年後見制度は本人の財産や不動産を適切に管理する上で優れた制度である一方、問題点も存在します。

ここでは成年後見制度の問題点を 2 つ、取り上げてみました。

選任された成年後見人を解任することが難しい

裁判所に選任された成年後見人を解任することは可能ですが、基本的には解任事由として「不正な行為」「著しい不行跡」などが認められない限り解任は難しいとされます。

そのため、たとえ家族であっても解任が難しいことに加え、解任するためには家庭裁判所に対して解任請求の申立てをしなければなりません。

解任の申し立てにあたって不正の証拠を集める必要があるほか、場合によって弁護士や後見人の手続きに知見がある専門家に助けを求めなければならないこともあるでしょう。

また、申立てから実際に解任が認められるまで、それ相応の時間がかかることも念頭においておくようにしてください。

一度後見が開始されると取り消すことが難しい

成年後見人の申立てをしたあとに万が一取り消しをしたくなった場合、裁判所の許可が必要となります。

そのため、一度後見が開始されてしまうと簡単に取り消しができないことを今一度理解しておくことが大切です。

また、医者の診断や鑑定で「後見」ではなく「保佐」と判断されたからといって自動的に切り替わることはありません。

鑑定によって後見開始事由がなくなった場合で保佐としたければ、新たに保佐開始の審判を家庭裁判所に対して申し出る必要があります。

そして、後見を取り消す場合には後見に代わるサポート体制を前もって整えておくことも大切です。

成年後見制度以外に家族信託という方法もある

成年後見制度についてお伝えしてきましたが、財産管理を家族に任せる方法として「家族信託」という手法もあります。

ここでは家族信託の仕組みについて見ていきましょう。

家族信託でできること

家族信託とは、本人の意思能力があるうちに財産管理を家族に任せる方法のことを指します。

成年後見制度では家族以外の第三者が成年後見人として選出されてしまう場合がありますが、家族信託ではそのようなことはありません。

そのため、財産管理を第三者に管理してもらうことに抵抗がある場合や、なにかと制約の多い成年後見制度を利用したくないといった場合におすすめです。

本人に財産管理を任された受託者は財産の管理や処分、事業承継等ができるようになり、法定後見人よりも柔軟に財産管理ができます。

ただし、その一方で契約行為の代理など身上監護はできないことに注意しましょう。

家族信託の費用

家族信託を利用するには、コンサルティング費用や信託契約書作成といった初期費用のほか、公正証書化費用や登記費用(信託財産に不動産が含まれる場合)など様々な費用がかかります。

依頼先によって異なりますが、仮に現金と不動産(合計 3,000 万円程)を信託財産とした場合、初期費用約 30 万〜50 万円、公正証書化費用約 4 万円、登記費用約 10 万円程度はかかるでしょう。

また、これらに加え、各種証明書取得にかかる実費や信託口口座開設費用、信託監督人費用などがかかるケースもあることをおさえておきましょう。

家族信託を利用するための条件や期間

家族信託を利用するための条件は、本人に意思能力があることです。

また、利用期間については、家族信託の契約時に信託終了事由を定めた場合、その事由に該当した時点で家族信託が終了となります。

終了事由を特段定めなかった場合には、受託者と委任者の合意をもって家族信託は終了します。

任意後見との併用も可能

意思能力がない状態になってしまうと家族信託も任意後見も利用できず、法定後見制度を利用するしかなくなってしまいます。

ただし、意思能力があるうちであれば家族信託と任意後見制度を併用するといった手段も選択することができ、それぞれの欠点を補い合えるでしょう。

任意後見制度を利用することで家族信託では認められない身上監護ができることに加え、家族信託によって柔軟な財産管理が可能となるほか、亡くなった後の相続についても対策を講じることができます。

なお、身上監護とは本人の生活や療養、介護に関する法律行為を行うことを指し、施設への入居手続きや入退院の手続きが可能になるのが大きな特徴です。

成年後見制度ではなく家族信託という選択肢もある

家族が成年後見人になれないケース

今回の記事では成年後見人に家族を選ぶことはできるものの、審判によって家族以外の第三者が選出されるケースもあることについてお伝えしました。

万が一、第三者が成年後見人に選ばれてしまうと、家族は本人の財産を管理できなくなってしまいます。

そうした法定後見制度のデメリットを回避するために、本人の意思能力があるうちに家族信託を検討するのは賢い選択だといえるでしょう。

家族信託であれば、あらかじめ作成した信託契約書内で指定した人に財産管理を任せられるほか、家庭裁判所を介入させることなく、本人の希望に沿った柔軟な財産管理を行うことが可能です。

ファミトラでは、家族信託コーディネーターがお客様の状況に合わせて大切な財産をを守るためにサポートいたします。お気軽にご相談ください。



家族の資産に安心を ファミトラ