家族信託ってなに?その概要をまとめてご紹介

家族信託ってなに?その概要をまとめてご紹介

目次

最近メディアや雑誌で取り上げられている家族信託とは?

突然ですが皆さんは、もし親が認知症になり、(※)意思能力が十分でなくなった時、どのような問題が起こるか知っていますか?
結論からお伝えすると、認知症で意思能力を喪失してしまった場合、契約、遺言などのあらゆる法律行為ができなくなります。

例えば、子であるあなたが、親の生活費や介護費を親名義の預金口座で管理していたとしましょう。すると、介護施設への入居費用など高額な金額を引き出す場合、ATM ではなく銀行窓口へ行かなければなりません。ところが預金は、口座名義人が管理するのが原則であるため、本人以外の家族や親族が引き出そうとした場合には、本人の意思確認が必要となります。

そこで、親と共に銀行窓口へ出向いた際、窓口担当者に、親の意思能力が不十分だと判断されてしまうと、口座からの出金を停止する措置をとられる可能性があります。

一度出金を停止されてしまうと、たとえ家族であっても引き出すことはできません。

これがいわゆる「認知症による資産凍結」という状態です。 上記はほんの一例にしか過ぎませんが、このような形で生活費や介護費が凍結されてしまうケースは、高齢化が進んでいく現状を踏まえると、今後更に増えていく可能性があります。

※「意思能力」 財産を所有している人が、自分がどのような財産を持っていて、誰に託したいかや、どのように管理してほしいかといった意思表示ができるかどうかということ

資産凍結ってどんなことが起こるの?親の生活費は大丈夫!?

意思能力を喪失してしまうと、それまで出来ていた銀行預金の引き出しや解約はおろか、自宅の売却や不動産の管理・処分等もできなくなってしまいます。

もしあなたが将来、お住まいの自宅や親が所有している賃貸マンションなどを売却して、親の生活費に充てたり、親をサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)へ入居させようなどと考えていた場合、それができなくなるということです。

「認知症による資産凍結」は、今や深刻な社会問題となっています。

実際にこのような事態に陥ってしまった時、何が大変になるのでしょうか。 資産が凍結されている以上、子であるあなたが親の生活費を肩代わりする必要が出てきます。

ではここで一度、認知症を発症して 10 年間介護が必要になったと仮定して、かかってくる金額をシミュレーションしてみましょう。 在宅介護でかかる平均費用は月々 7〜8 万円ほどと言われています。仮に 7 万円だとすると、7 万円 ×12 ヶ月 ×10 年で 840 万円。これに加えて、介護用品や消耗品などの生活費も想定すると、少なくとも約 1,000 万円は必要になる計算です。

施設に入居した場合はもっとかかります。要介護度によっても変わってきますが、施設入居の一時金だけでも平均で 300 万円かかると言われています。そこに毎月の利用料や生活費として 20 万円程度プラスされることを考えると、10 年間で約 3,000 万円は必要です。(高額な介護施設に入居した場合、入居一時金だけで 3,000 万円を上回るケースもあります。)

実際の数字から考えてみてもわかる通り、余程ゆとりのある場合を除けば、自分自身の老後生活の備えに加え、親の生活費や介護費まで捻出できる人はまずいないでしょう。

「認知症による資産凍結」は決して本人だけの問題ではありません。認知症の親を抱える子どもは、思わぬ形で経済的負担を負うことになるのです。 この記事を読んでいるあなたは、将来親の生活費がいくらかかるのかを考えてみたことはありますか?

誰にでもおこりうる、認知症のリスク

将来起こりうる問題やリスクを、私たちは先送りにしがちです。両親や配偶者、身近な人が認知症になった時のことなど考えたくないと感じるのは、当然のことだと思います。

しかし、超高齢社会に突入し、2025 年には認知症患者が 700 万人を上回り、65 歳以上の約 5 人に 1 人になると言われている今、誰もが認知症にともなう生活費などお金の問題に向き合うことが重要です。

近年家族信託という制度が注目されている!?

そうした中、近年「家族信託」という制度が注目を集めています。

家族信託は、これまで前述してきた認知症にともなうお金の問題を解決する手段となりうる財産管理手法の一つです。

家族信託を用いることで、あなたのご家族が抱えている、あるいは将来抱えてしまうかもしれないリスクを、未然に防ぐことができるかもしれません。

次の項からは、家族信託の仕組みや、家族信託が注目されることになった背景について詳しく解説いたします。

家族信託ってどんな制度なの?誰でも使えるの?

そもそも家族信託とはどのような制度なのでしょうか?

家族信託とは、意思能力があるうちに自身の持つ財産を信頼のおける家族に託す、新しい財産管理の手法です。 2006 年に信託法が改正されたことにより、一般家庭でも簡単に利用できるようになりました(「民事信託」と表現されることもありますが、一般的に信頼できる家族に財産を委託するケースが多いことから、「家族信託」と呼ばれています)。

信託財産の内容や、信託財産をどのような目的でどのように管理するかは、家族同士で交わされる信託契約書によって明確に規定されます。託された家族は、信託契約書に沿って、託した方が認知症になった後も信託財産の管理・処分を行えます。

結果、家族信託という制度により、「認知症による資産凍結」というリスクを回避することができるのです。

遺言で管理するのではダメなの?

財産の管理方法として「遺言」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

実際「別に遺言を書いているから大丈夫なんじゃないの?」といった質問を受けることがよくあります。確かに遺言を書いておけば、自分が亡くなった後に財産が渡る先を予め指定することはできます。

しかし、認知症になってしまった場合はどうでしょうか。 遺言では、生前、自分自身で財産を管理することが難しくなった時のリスクまで対応することができません。その点、家族信託は契約締結と同時に効力が発生するため、生きているうちから、柔軟な財産管理をすることが可能となります。

このように家族信託は、事前に本人の意思や希望を尊重した契約を設計しておくことで、本人が元気なうちから「大切な家族の財産を、家族で守る」ことを実現し、仮に認知症を発症してしまったとしても、資産が凍結されることがなくなるしくみなのです。

「家族信託」が改めて注目されるようになった背景って?

ではなぜここ数年において、家族信託が注目されるようになってきたのでしょうか。 その背景には、以下のような問題があると考えられます。

1. 平均寿命と、健康寿命の差に潜むリスク

平均寿命とは、0 歳時点で何歳まで生きられるかを統計から予測した「平均余命」のことです。一方で、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指します。世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健統計 2016」によると、私たち日本人は平均寿命と健康寿命の差が約 10 年もあると言われています。

この差は何を表すのでしょうか??

これはつまり、病気やケガなどが原因で自力で日常生活を送ることが困難になり、介護が必要な状態が平均して約 10 年もあるということです。健康寿命を伸ばすことが社会的な課題に挙げられている今、平均寿命と健康寿命の差をいかにして短くできるかが注目されています。それと同時に、このギャップの期間に、出来る限りトラブルを減らす取り組みも重要とされています。

2. 超高齢社会の現状

「うちの両親はまだまだ元気だし、認知症になりそうもない。」そう思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、現実には認知症は思ったよりもずっと身近な病気です。

厚生労働省の発表によると、日本の 65 歳以上の高齢者における認知症患者数は、2012 年時点で約 462 万人、7 人に 1 人という割合でした。ところが、高齢化が進展している今、認知症患者数は年々増加傾向にあり、2025 年には認知症患者数は約 730 万人、つまり 5 人に 1 人にのぼると推計されています。認知症は決して他人事ではないのです。

「人生 100 年時代」と呼ばれている今、私たち一人ひとりが認知症に対する理解を深め、将来起こりうるリスクに対して、どのように対処すべきかを考えることが大切です。

超高齢社会の現状

資料: 2010 年までは総務省「国勢調査」、2015 年は総務省「人口推計(平成 27 年国勢調査人工速報集計による人口を基準とした平成 27 年 10 月 1 日現在確定値)」、2020 年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果
(注)1950 年~2010 年の総数は年齢不詳を含む。高齢化率の算出には分母から年齢不詳を除いている。

3. 成年後見制度の実情

認知症などにより意思能力を喪失してしまった人に代わり、財産管理や契約行為を行う制度として、「成年後見制度」があることを知っている方も多いかと思います。利用を検討している方もいらっしゃるでしょう。

しかし今、この制度をめぐるトラブルが多発しているのです。

成年後見制度に潜むリスクとデメリット

成年後見制度には、以下のような問題点があります。

  • 成年後見人に親族が任命される場合が少ない(約 70%の割合で、司法書士や弁護士などの専門士業が任命される)
  • 親族が任命されたとしても、後見監督人を選任する必要があり、家族のみでの財産管理ができない
  • 基本的に本人が亡くなるまで続くため、途中で利用をやめることができない
  • 定期的に家庭裁判所(または後見監督人)に対して報告する義務がある
  • 後見人を選定した場合、毎月 2〜6 万円程(後見監督人の場合は毎月 1〜3 万円程)の報酬を支払う必要がある
  • あくまでも本人のみの財産保護を目的とした制度であるため、資産の運用などの柔軟な管理ができない など

上記のように、成年後見制度は負担や制約が多く、本人や親族の意向に沿った財産管理を行うことが難しい制度なのが実情です。

こうした背景から、自由度が高く、家庭内で管理を完結させることができる家族信託こそが、後見制度の代替手段となりうる制度として注目されているのだと言えます。(ご家族状況によっては、後見制度を利用することが適切であるケースもあるため、各制度の特徴をきちんと理解した上で、利用するか否かを慎重に判断することが必要です。)

誰でも利用できる!家族信託のやさしい「しくみ」

ここでは、家族信託のしくみについて説明していきます。

まず「信託」とは、「ある人(委託者)が、自分の所有する財産を信頼できる人(受託者)に託し、一定の目的に従って管理・運用・処分してもらうしくみ」のことです。

信託の関係者は主に 3 者います。

  • 委託者(本人)……財産を預ける(信託する)人
    ※ここで委託する財産を「信託財産」と呼びます。
  • 受託者(家族など信頼できる人)……財産を預かり(委託されて)管理・運用する人
  • 受益者(恩恵を受ける人)……信託財産から生じる利益を得る人

関係性を図で表すと、次の図のようになります。

誰でも利用できる!家族信託のやさしい「しくみ」

※認知症対策の信託は多くの場合、委託者と受託者が同一人物となります。この形は「自益信託」と呼ばれ、所有権のみを受託者へ移すことができます。つまり、信託財産の実質的な所有者は受託者ではなく受益者となるため、贈与税などは課税されません。

受益者と、受託者の役割って何?

信託開始後は、主に「受益者」と「受託者」がメインプレイヤーとなります。

受益者は基本的に信託財産から利益を受けるのみで、義務を負担することはありませんが、受託者を監視する役目も持っています。

一方で受託者は、信託財産の管理・処分という大きな権限を持つことになるため、法律上様々な義務が課せられています。
そのため、受託者は受益者の利益になるよう、誠実かつ忠実に、信託財産の管理・処分および信託契約で定められた信託目的達成のための行為を行う必要があります。

また、信託財産として託す財産は、法律上特段の制限はありません。財産上の価値があるものであれば信託財産とすることができます。

上図からもわかる通り、家族信託は、三者間の信頼関係が非常に重要なポイントとなります。そのバランスが崩れれば家族信託自体が破綻してしまうからです。

信頼のおける家族といえど、長期間に渡る信託契約の中で、受託者による信託財産の使い込みや、受益者の希望通りの信託が運営されないなど、組成時には想定しえなかった事態が生じる可能性がないとは言い切れません。

【信託財産の例】
不動産、現金、有価証券(株式、投資信託、債券など)、絵画、骨とう品、車、バイク、船舶、著作権、特許権などの知的所有権、家畜やペット など
※ただし、不動産の中でも、家族信託の運用上「農地」は信託財産とすることが困難です。登記簿上の地目が「畑」や「田」になっている土地を信託する場合は、農業委員会の許可もしくは届け出が必要となります。

重要な役割を果たす、信託監督人の存在

そうした事態を事前に回避するために、「信託監督人」という役割を、信託契約書上で予め指定することができます。信託監督人は、信託が受益者のために適切に運営されているかを監督する役目を持っています。

信託監督人の設置は任意ではあるものの、信託の透明性を確保するという意味でも、客観的な立場から信託をチェック・サポートしてくれる、親族以外の人物を信託監督人に指定することで、より信託の透明性・公平性を高めることができます。

※公平性を高める他の手段として、受託者を複数人にしたり、「受益者代理人」を設定するなどの方法もありますが、詳しい内容についてはお電話にてご相談ください。

いずれにしても、「委託者」「受託者」「受益者」それぞれの役割や責任を理解した上で、信頼できる人を選ぶことが非常に大切です。

事前に家族会議を開き、どのように財産管理を行っていくか、家族間できちんと話し合うようにしましょう。

まずは「家族会議」から始めてみましょう

いかがでしたでしょうか?

今回の記事では、家族信託の概要についてまとめてみました。

お読みいただいた方の中には、「認知症や資産凍結のリスクについてはなんとなくわかったけど、老後の生活や資産状況の話はなかなか切り出しにくい…」と感じられている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、「何もしない」ということが一番のリスクです。後回しにした場合、誰もが望まない未来が待ち受けることになります。

手遅れになる前に、まずは「家族会議」から始めてみましょう。

「どのような老後生活を送りたいのか」
「病気や介護のリスクにどう備えるか」
「保有資産は何か」
「どのように相続していくか」など。

ご家族の「想い」や「希望」を実現し、安心した生活を送れるようにするための第一歩が「家族会議」なのです。



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